戦略戦術詳解

研究会著
東京　兵事雑誌社
明治四十四年八月〜十一月

第一巻　第十一章　戦闘及其勝敗（一部）

戦闘ノ定義

戦闘トハ戦争中直接敵ニ対シテ兵器ノ効力ヲ顕ハシ輸羸ヲ決スル動作ヲ称ス。

故ニ戦場ニ於テ両者相対シ衝突シ互ニ兵器ヲ以テ対者ヲ圧倒セントスル動作ヲ云フモノトス。

軍ノ統帥部ノ任務ハ敵ノ兵力ヲ殲滅スルニアリ戦闘ハ敵ノ反抗意ヲ破壊スヘキ大手段ニシテ爾他ノ大小ノ企図ハ唯タ決戦ニ於テ其解決ヲ表現スヘキ状況ヲ誘致スル手段タルニ過キス（独逸高等帥兵ノ原則）

戦闘勝敗ノ素因

戦闘ノ勝敗ハ左ノ諸因ニヨル。

　一　軍隊ノ精粗。
　二　志気ノ振否。
　三　指揮ノ巧拙。
　四　兵数ノ多寡。
　五　土地ノ形状。
　六　天候及時刻ノ適否。
　七　予期スヘカラサル事変。

以上ハ単ニ主ナル項目ヲ挙ケタルニ過キス其詳細ニ亘リ表示スレハ左ノ如シ

戦闘ノ 勝　敗	常道	要素	有形的	不随意的	天時 地形	天候。 季節。 時刻。
				随意的	＝＝以下戦争力ノ部ニアリ
			無形的	情 智 意	以下戦争力ノ部ニアリ。
		助素	直接	奨励法＝＝賞与、慰労等。 鼓舞法。
			間接	教戒法＝＝教育訓戒、宗教 助勢法＝＝国民、家族ノ精神上ノ助勢。
	変道	自然的	天災。 人災。
		人為的	失策＝＝過誤、失機、乗齟齬。 得策＝＝奇術、奇計。

石原光将 ISHIHARA Mitsumasa