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Information Warefare Resources

情報戦とは何か

第5章Sample

電子戦
Electronic Warfare

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 ここで論じられた情報戦の最初の2形態は、システムに対する攻撃(指揮統制戦)か、システムによる攻撃(諜報基盤戦)であった。第3の形態は電子戦(EW)、すなわち軍事行動上の技術、つまり無線電子と暗号法、すなわち通信領域における戦争である。電子戦は、情報伝達に関する物理的基礎を弱めようとし、暗号戦はビットとバイトの間で働く。

 どちらのタイプの電子戦も実は新しくない。直接的には、これらは英国がルフトヴァッフェ(Luftwaffe)から本国を防御するのに成功したことに裏打ちされている。近年では、情報戦のある一定の性質を持つものとして、この新しい名称のもとで電子戦をとらえなおそうという努力がなされている(注24)。現在の状況として起こっているのは、技術が発展して、(いにしえの爆撃機のように)ビットを通過させることを好むようになっているということである。

24. テキサス州サンアントニオの元・統合電子戦センター、現在の指揮統制戦センターと、共同配置されている合衆国空軍情報戦司令部の近い関係を考慮せよ。

 

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対レーダー

 (注25) 電子戦コミュニティの大きな部分は、レーダー(受信と送信の両方)と、妨害・対妨害に関する問題を扱っている。攻撃も防御も新しい技術を取り入れ続けている。伝統的レーダーは、1つの周波数で信号を生成している。周波数を知れば、帰りの信号を防ぐことは容易である。それより新しいレーダーは、周波数帯域を次々に変えていく。レーダーに対抗するために、現代の妨害装置は、入力信号を得て、その周波数を決定し、それに従って出力妨害信号に周波数を合わせ、反映された信号の長さと力を最小限にするのに十分な邪魔な電波を迅速に送り返す必要がある。戦闘機とともに編成される妨害機は、強力な出力で応答信号を弱める(レーダーと目標の間の力を4分の1に弱める)が、そうすると妨害機は非常に発見されやすくなるので、自身を守らなければならない。湾岸戦争の多国籍軍は、妨害機をひとまとめに使うという新しい協同作用を開発した。レーダーは、出力信号のために、それ自身が目標となってしまう。対放射ミサイル(たとえばHARM)は、レーダーを切ってしまうか、きしんだりパチパチしたりすることに頼らざるをえなくしてしまう。抑止型 Tacit Rainbow ミサイルは、レーダーが使われるまで戦闘地域でぶらぶらしているように設計されている。出力信号は、ミサイルに入力指針を与え、そちらの方向に向かわせる。デジタル化が改善されるにつれて、レーダーは、誤った妨害信号が反射を隠してしまう前に、一時的なパルスの発生と反射信号の解析によって目標を取得できるようになっている。

25. 対レーダー技術は、対センサー技術に一般化できる(たとえば、赤外線誘導ミサイルを攪乱する炎の使用など)。レーダーの重要な特徴は、受動的電磁放射線と逆に、反射されたものを受信できるということである。レーダー信号は入出力のどちらでも攻撃される。


 デジタルの精巧な装置が安くなるにつれて、受信装置から発信装置を分離することが論理的に好まれるようになってきた。対放射ミサイルの目標となる発信装置は、システムが生き延びることを保証できるように、また高価なミサイルのためのスポンジとして働くように、増殖されるだろう。ミサイルは、小さなものの集積から大きな仮想のアンテナを作り出すだろう。出力信号は一層複雑になるため、アルゴリズムの集積もまた複雑になっていくだろうが、さらに複雑な円を適切にカバーする妨害装置の能力は遅れるだろう。集積の表面を拡散するなら、レーダーが目標を誘うことも少なくなるだろう。

 

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対通信

 通信装置に対する電子戦は、レーダーに対する電子戦より、一般的に遂行困難である。通信信号の強度は、送信機への距離の2乗に反比例して弱まる(レーダーが4分の1の力になるのと対照的である)。レーダーが目標を捉えようとする(つまり敵の装置にビームを送ろうとする)のに、通信装置は完全に敵を避け、特定の方向に向けようとするのである。通信装置は、周波数の急な移動、スペクトルの拡散、暗号部門多層アクセス(CDMA)技術に移行している。これは妨害も遮りもしづらい。既知の場所(衛星、UAVなど)との受信・送信は、デジタル技術によって、前面の信号に焦点を合わせて敵から来る妨害を防ぐことができる。信号冗長化と結びつけられたデジタル圧縮技術は、たとえ大部分が破壊されてもビットの流れがそのまま回復できることを意味している。

 電子戦はまた、発信機を地上設置するのに使われる。環境がうるさければうるさいほど、作業は複雑になる。本当の信号パターンを見分けることによる妨害技術をくじけさせるために、電子的な乱雑さが背景に作られた情報源を増やすことは、一つの防御である(注26)。もちろん、徹底的な仕事のためには、軍事行動をもっともらしく示すことができるような地域の発信装置を散乱させるために資源を費やす必要がある。そうするためには、他の任務から資源を振り向けることになる。

26. 音声呼び出しは、誰がいつ、空白時間(つまり聞いている時間)を埋めるための時間が何パーセントかという点からの一定のパターンを持っている。暗号化技術は、空白時間のパターンを覆い隠すことができる。誤った発信装置は、ランダムな位置から間違った会話を生成することができる。


 上記で示されたように、目標を発見する作業は、人力から、センサーの分配されたシステムに移行しそうである。分配されたシステムが差し迫って必要であるにもかかわらず、多くのセンサー、指揮システム、拡散した兵器のあいだをつないでいる通信をひじょうに頻繁に使わなければならないという必要があることは、アキレス腱となっている(注27)。センサーの豊富な環境では、電子戦――妨害やソフト破壊によって表現される――は新しい重要性をもつようである。たとえば、地方のセンサーからの通信に対する干渉によって、敵のシステムが検出されずに動けるような仮想的空白地域を作ることができる。この戦術が成功するかどうかは、分配されたセンサー・システムの構造を粉砕できるか否かにかかっている。分配された地方センサーにもっぱら頼っているシステム(相互通信あるいは低出力中継信号)は、最も無防備だ。地方の独立センサーを挟んでいて、その適用範囲が変化し、重なっているのが普通であるようなシステムは、もっと丈夫だ。

27. 些細な比較において、パイロット、FLIRセンサー、付属兵器のあるF-18戦闘機は、合計3機とワイヤーやパイロットの心でつながることができ、そのため妨害にずっと抵抗力がある。

 

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暗号法

 自らのメッセージを変調させ、敵のものを解読することによって、それぞれの陣営は情報戦の真髄といえる行動をとることになる。それは現実の自陣営の見解を守り、敵陣営のものを間違わせるのである。暗号法は数学において最も関心をひきつけてきたが、悲しいことに、永く華々しいその歴史とは違って、この領域における戦いは歴史的な関心のみをひきつけることになるだろう。

 コンピューターで生成されたメッセージの解読は、急速に不可能になりつつある。トリプル・デジタル暗号化標準(DES)のような秘密鍵を使ったメッセージ通信や、公開鍵を使って秘密鍵を通す(これは通信は明らかになってしまう)のための公開鍵暗号化(PKE)などの技術の組み合わせは、おそらく、最高の暗号解読コンピューターをも圧倒するだろう。基礎的な数学は単純である。DESデータ暗号化のためのある鍵の長さに対して、その暗号を解読するために必要な力(注28)は、A*N(xは鍵の長さ、Aは正の数、Nは1以上)であり、暗号を作るのに必要な力は、B*m(Bは正の数、mは1以上)である。A、B、m、Nの量には関係なく、がある数を越えたとたん、暗号解読は作成より困難になり、が増大するにつれてむずかしくなっていく。

28.56ビット鍵の単一DESでは、=56である。80ビット鍵のトリプルDESは、=80である。この公式はPKEではまた異なって働く。というのも、暗号解読者への挑戦は、一つの正しい鍵を見つけるよりも二つの基本的な数字を生み出す要素であるからだ。現在のPKEソフトウェアは1024ビットの鍵長をサポートしている(そのために近い未来には解読不能なのだ)が、PKEは大ざっぱにいってDESよりも数千倍コンピューター的に能率が悪く、やりとりにはDES鍵がよく使われている。


 暗号化がインターネットに広がり、すべての通信がデジタル化しているが、暗号が全体に広がるようになるには時間が必要だろう。アナログは、その寿命が限られているが、古いシステムに残っていくだろう。スペクトル拡散や周波数移動などの信号隠匿技術と結びついた安価な暗号化は、暗号解読装置の運命を閉ざす。

 デジタル技術は偽造――有効なメッセージのための代用として当てにならないメッセージ――をほとんど不可能にする。デジタル書名技術によって、誰(何)がメッセージを送ったかということ、メッセージが改変されたかどうかということについて、受信者はどちらも知ることができる。偽装を作る側が内部のメッセージ作成システムを手に入れるか、受信者が共通デジタル鍵のリストにアクセスできなくなる(つまり、更新がその場で利用できない)のでないかぎり、偽造の成功確率は極めて低い(注29)

29. メッセージの時間がその内容の一部であるなら(たとえば、全地的位置システム[GPS]時刻信号)、もともとのメッセージがブロックされてわずかに違った時刻に再伝達されれば――受信者が正確な時計を持っていないときには――システムはだまされる可能性がある。

 

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