防御的諜報基盤戦
同様に予測(あるいは、勝っているときに認めること)がむずかしいのは、不可視性を保つために、あるいは少なくとも戦場における画像と現実の間の距離を広げるために開発された防御である。諜報基盤戦システムは、いくつかの方法で攻撃されうる。一方では、合衆国センサー航空機(AWACSやJSTARSなど)に対抗するよう大いに努力することがうるさく主張されている。逆に、つぶすには安すぎるセンサーを使うことが賢いかもしれない(たとえば、1000ドルのセンサーに対して1万ドルのミサイルを撃つのはもったいない)。センサーは、使っているシステムを不能にすることによって攻撃できるし(たとえばハッカー戦)、そのシステムは無能化あるいは劣化させることができる(たとえば電子戦)(注19)。
19. すべての軍人に戦場司令官の視野を与えることは、大きな弱みを作り出す。軍人とその装備を捉えれば、敵は同じ視野を得ることになる。これは、一方の側が諜報基盤戦において事前にどれほど優越していようと、一撃で無効化してしまう。それはまた、相手側のこのような視点や能力が――あるいはよくても、見えない部分が――「どのように」獲得されたかを明らかにしてしまう。これは大きな問題となる。伝達が物理的に可能で、しかも実に容易であるようなときでも、彼らの生き残りに影響するような敵についての情報は、それでも彼らに伝えてはならないということを、危険な状況にある部隊に対してどうやって説明したらいいのか? そのような情報を統制する努力は、外部からよりも内部から挫折してしまいがちである。
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最も興味深い防御は、10年から20年のうちに合衆国に敵対しそうな相手に関連して、伝統的カバー(隠蔽)とステルス導入による詐術の変形を使うことである(注20)。センサー表示が技術的に正確なとき(つまり、表示が現実を反映しているとき)、反撃諜報基盤戦は、センサー表示とセンサーシステムが結論づけるものとの関連をゆがめる必要がある。
20. ほとんどの現代のプラットホームは、発見されにくくなるよう発展しているが、コスト的に考えれば、特殊な使用(たとえば、特別作戦軍に対する深度攻撃)や伝統的形態(たとえば、潜水艦)に対するステルスは追放されてしまいそうだ。
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高密度地域(都市部、村落集合、森、山、ジャングル、濁り水)では、対戦略はごちゃごちゃした混乱を利用したり、増殖させたりできるだろう(注21)。毎日の民間商業生活の財産が豊富であるような地域では、軍事資産は、民間の資産と混同されうるように選ぶ必要がある(民間資産は、数が多く、戦争努力にあまり直接関係しない傾向があり、そのためそれほど価値ある目標ではない――にもかかわらず、交戦規則とは逆である)。
21. 低密度領域――平原、砂漠、澄んだ水域――では、人造の目標、特に軍事的なものは、そこにあるはずがないので目立つだろう。そのため、目標となることを避けるためには、周囲に人造の乱雑な物体を置くよりも、物体を背景に似せるべきである。
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広義のデコイ(おとり)についておそらく一般的なのは、木を隠すにははっきりしたレンガの壁で囲うよりも森のほうが実用的だという理論においてであろう。このような手段が成功するには、欺くために作られた諜報基盤戦システムの構造にかかっている。セクターの複合と重複に基づいたシステムは、単一センサーよりも回避しづらい。
予測可能な未来においては、戦場センサーはすべての情報を充分詳細に同時に見ることができない(注22)。したがって、センサーシステムは、「報知・選別・正確な位置指定」の組み合わせを使う必要がある(たとえば、JSTARSシステムが移動する車両の一群を識別し、UAVがそのそれぞれを認識できるように分別するように)。どのセンサーがどの機能に割り当てられるだろうか? 周辺センサー(たとえば音響的なものや生化学的なもの)が報知に使われ、電子光学的センサーが正確な位置指定に使われるのだろうか? 赤外線レーダー表示が報知に使われ、ネット機器による神経系が選別に使われ、周辺センサーが弁別機に使われるのだろうか? どのセンサー表示が役に立たないとして処分されるのか? 比較的弱い領域に対して、システムはどのように補うのか?
22. 一例として、典型的な作戦戦域(400km四方)の適度に詳細な(1メートル解像度)マルチスペクトル(8ビット×8帯域)画像は、圧縮しないで1000兆ビットの情報になってしまう。圧縮して、選択的諜報更新したとしても、空中を経由して背後の戦線の場所へ同じ情報を送るために必要な帯域は、電磁スペクトルの中に収まらない。
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ある対象は、アヒルのように見え、アヒルのように歩くが、ガチョウのように鳴いているかもしれない。どちらなのだ? 一方では、慎重に家禽調査を申し出て、どれがアヒルとして分類され、どれがガチョウとして分類されたかを調べれば、観察システムがどのように結論を導くかという糸口を防御者は引き出すことができる。逆にいえば、観察された観察システムは、意図的にガチョウのふりをさせたアヒルを見過ごしてしまい、そんな区別はできないという思いこみを強めてしまうかもしれない。これは諜報のゲームにおける古いテクニックである。諜報基盤戦は、戦場にしつこく諜報の特性・傾向・習慣(注23)を持ち込むのである。
23. ウィンストン・チャーチルは、英国の暗号解読機エニグマ・システムによってドイツがコベントリを爆撃しようとしていると知っていたにもかかわらず、英国がドイツの暗号を解読しているということを隠すために、対策をとらないように決定した。
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情報技術は、対象発見技術に貴重な貢献をなすものとされるかもしれない。それはまた、主要な目標検出機器――近接した兵士――が、この目的のためには不十分すぎ、高価すぎ、また無防備すぎるときに使われる次善のシステムであるとみなされるかもしれない。オープンな環境(明日の自由交戦地域)は別として、ハイテク発見装置がいつも登場する必要があるとしても、ローテク隠蔽装置に対する勝利ははっきりしないままであろう。
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