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Information Warefare Resources

情報戦とは何か

第3章Sample

指揮統制戦
Command-and-Control Warfare
(C2W)

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 以下は、指揮統制戦と情報戦についての国防総省の中枢的見解からとったものである。

 C2W[指揮統制戦, Command and control warfare]は、戦場で情報戦(国防総省指令TS-3600.1,1992年12月21日「情報戦」)を実行し、物理的な破壊を統合する軍事戦略である。その目的は、指揮力の母体から敵の指揮構造を取り除くことである(注6)

6. 現在改訂中のMOP-30は、情報戦を作戦ユニットに細分化する。軍事作戦に限られているが、それは次のようなものを含む。「作戦セキュリティ、軍事的詐術、心理学的作戦、電子戦、物理的破壊、諜報による相互支援、敵の指揮統制能力を影響・低下・破壊させる一方で友軍の指揮統制能力をそのような活動から守るための情報否定の集中的使用」(2).

見取り図。ここで使われた概要では、MOP-30がカバーしているのは、指揮統制戦、電子戦の対通信的な側面、防御的諜報基盤戦、ユニット級の心理作戦である。「指揮統制戦で使われるこれら(PSYOP=心理作戦)の軍は、多くの場合、戦いの他の局面を遂行するために使われたのと同じ戦力であり、いくつかの独自能力を示すまでは、その本来の部隊としての同様の流れの中で動くことになろう」(20).


 このように定義されため、湾岸戦争でイラクの指揮統制構造の数多くの物理的に示されたものを破壊することによって、合衆国軍は情報戦の勝利を見せつけたのである。これらの作戦は、合衆国地上軍が進軍したときに巨大なイラク軍が無効だったという理由を示すものとしてよく示された(注7)

7.地上攻撃に先立つ継続的絨毯爆撃と組み合わされた物質的欠乏期間が延長されたことも指摘されてきた。


 無力化は、頭を吹き飛ばしてもいいし、首を切ってもできる。どちらも異なった戦術的・戦術的な目的のために遂行される。

 

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対頭(antihead)

 司令官の頭を狙撃することは、戦いの古い様相である。捕らえた敵の王に実行した古代から、船上の狙撃手に撃たれたネルソン提督の死、南北戦争で敵対する将軍に対して射撃の名人を雇ったこと、第2次世界大戦中の山本五十六提督撃墜、戦略核目標理論、湾岸戦争中にサダム・フセインを捜し、ソマリアではモハメド・アイディードを探そうとしたことなど、例は多い。新しいのは、司令官への近づきやすさが変化し続けていることである。指揮の効果のために、司令官が戦闘の範囲の近くで監督・残留することが求められてきた。第一次大戦で、有線通信のおかげで司令官は敵の兵器の届く範囲の外で行動できるようになった。その後、飛行機とミサイルが、司令官を再び目標ゾーンに取り込んだ。

 司令官の物理的な位置より重要なのは、司令官から指揮センターに変ったことである。今日の指揮センターは、豊富な可視通信とコンピュータ処理装置(と関連する電磁波発信機)、紙その他の公用品の物理的移動、そして軍事的任務の他の集合地からこれらのセンターを分離するためのあらゆる種類の行き来によって特徴づけられる。

 指揮センターへの攻撃は、特に正確に調節されるなら、高位の敵司令官に命中せずとも、作戦のためには破壊的であると証明できる。一点弱点の不利は知られているにもかかわらず、連絡のほとんどのやりとりは、非常に狭い空間内で流れる傾向がある。すべての人の状況認識に調和させるようにデータを分割して分配するためには、中心的中央集約か、現代に伝えられたシステムの大きな再設計が必要だ。指揮センターの場所を決定することで、ピチピチした目標が射程内に来ること――めったに訪れない機会――が可能になる。正確に調節された攻撃は、破壊の直接的効果以上に、作戦を混乱させ、散らすことができる。

 指揮センターを攻撃する方法は、鉄製爆弾だけではない。システムを不能にするには、電源を切ること、信頼できないようにするのに充分な電磁的干渉を導入すること、コンピューター・ウィルスを流すことによってもできるが、これらの手段はどれも、目標を鉄の爆弾で狙うのに比べて確実性がなく、費用効率も悪い。ソフト・キル兵器の多くは、敵の場所を知る必要がある。それらのいくつかは従来の軍需品よりも有効範囲が広いものの、違いは限られており、点火前に発見することが同様に必須であることは依然として同じだ。

 指揮センターはいつまで見え続けるだろうか? 燃料積み込みは本部を保護できるが、燃費がかかる(そして、新しく完成した貫通砲のおかげで、深く、かなり動きづらい燃料庫が必要となっている)。指揮センターの署名の統制はよりよい戦略だろう。コンピューターはデスクトップまで小さくできるし、通信装置からの漏洩は電子的攪乱(計画的なものも、周辺的なものも)によって隠すか、あるいは司令部からの延長ケーブルや目に見える接続によって減らせるし、また紙は(いつか)おそらく光学機器によってペーパーレス社会を強いられることになるだろう。ネットワークは一般に分権的かもしれない(注8)。重大な目標を作り上げるための往来や集会は、テレビ会議やホワイトボードで減らすことができる(注9)。電力供給は、燃料搭載発電機か、もっと利口に、太陽発電装置によって補うことができる(その存在が指揮センターの場所をばらしてしまわないように、分散させるべきだ)。これらの手段によって、指揮センターは別の居住空間と区別がつかないようにしておける。この結果、破れた敵が打たれて傷つく度合いは、バックアップ体制(たとえば、どの連結がどの情報を供給し、どの情報が戦場での決定に使われているか)によって決まる。

8.物理的(弱い)とバーチャル(強い)の分散化は異なったものである。物理的分散化は、集中化された情報施設を固定させているが、メモリーと処理を分散・複製することによってシステムを守っている。バーチャル分散化は、それ自体に作用する能力を持っている子機を作るが、その決定の質を高めるためにセンターとの調整を使う。


9.ホワイトボード(Whiteboarding)とは、ある一人のスクリーンに置かれたものが別の人のスクリーンに現われるようにするネットワーク・アプリケーションである。


 拡散には時間がかかる。再構築には時間と金がかかり、指揮の難しさを深める。拡散が必要だとか、与えられた拡散レベルが攻撃に対して充分だろうとか司令官に納得させるには、提案者は、理屈で説くより、現実の実演をしなければならないかもしれない。しかし、変化は結局のところ、どこでも起こるだろう。他国の軍がいかに早く変化するかは、雑多な文化的要因だけでなく、技術的精巧さ、現在の指揮センターが無防備だと感じている度合い、個人的接触やシリコンのけばけばしいディスプレイにおいてどんな権威を与えるかということに依拠しているのである。長い目で見れば、敵の指揮センターを無力化できうるという仮定に戦略の基礎を置いている戦争計画者は愚かだということにもなりかねない。

 

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対首(antineck)

 現代の軍は、19世紀半ばからは電子通信によって、1920年代からは無線電子通信によって結びつけられている。これらの通信と指揮統制をなくすことはできず、また、それは戦いにおいても古いものである(注10)。新しいのは、情報時代における通信路の大きさだ。たとえば防空網システムは、それぞれの機関が独立して動くときよりも、多くの機関にまたがって統合されたときによく機能する。作戦が流れに依拠する程度によって、通信を切断しようとすることに意味があるかどうかが決まる。

10.南北戦争の南軍戦略には、北軍が使用している鉄道と電話線に対する急襲を行なうというものもあった。1864年までに、北軍戦力の半数近くが、通信業務や通信線保護任務にあたっていた。


 通信のつながりを切断するには、相手側がどのように通信するかを知っている必要がある。もしその施設が有線とされているなら、その接続点(たとえば、バグダッド都心部の電信電話会社ビル)が簡単に特定され、破壊される。合衆国軍が湾岸でやったように、指揮センターと同様、発電機・変電機・燃料供給パイプライン(たとえば、発電装置に至るガス管)に対する攻撃によって通信システムを損なうこともできる。施設が電磁的ならば、接続点が見えることもよくある(たとえば、マイクロ波タワー)。送信と伝達のために衛星が使われているなら、通信ラインは妨害されたり、防音されたり、止められたりする。

 攻撃の衝撃は、相手側がメインフレーム時代からどれだけ進歩しているかによって決まる。いくつかの大きな要素ではなく、多くの小さな要素で構成された通信系統は、放射も少なく、風景のなかに小さな影しか落とさない。これは大きな冗長さを生み、敵の狙っている問題をややこしくする。

 冗長さは、先進国・途上国双方の属性である。湾岸戦争が終わる前に、数多く破壊されたというのに開戦時よりも多くの(重要度が劣るとしても)攻撃すべき指揮統制目標が多国籍軍に残されていた。イラクは、おそらくは知られているよりも多くの通信システムを有していたことがわかっている。それは、西側石油契約者がその場に残したラジオ・システムから、主要都市周辺に巡らされた周辺地域電話システムに至るまであった。

 もちろん、故意に冗長にされているなら、偶然に冗長であるよりも効率的である。たとえ冗長さによってシステム全体の能力が落ちたとしても、通話複製システムは、ひどく悪化した状態を通じてもメッセージを得られる可能性を高める。さらに頑丈さを高めるには、(ひどい故障環境における爆発エラーを防ぐために)広範囲で洗練されたエラー修正技術で守ることができる(たとえば格子コード化(trellis coding))。冗長の戦略は、重要な少数の流れを、あれば便利程度のものから区別するという管理上の問題を残している。技術的というより官僚的な要因によって、いかなるデータ伝達システムの弱みも決定されることだろう。

 

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何に効果?

 対立の結果における指揮統制戦の潜在的影響は、被攻撃側との間の指揮関係構造に基づいている。イラクは、政治的な意味もあってソヴィエト顧問をまねた(イラク社会は、一つの信念ではなく、いくつかの信念を使って支配する)。頭と体の間のつながりを切ったり薄くするのは、体を動けなくするために容易に予想できたことであった。前線部隊は、合衆国の空と地上での攻撃にとってはカモであり、独自の反応はほとんど示さなかった。

 明らかに、イラクのような頑固な相手は、多くの可能性の一方の端に位置するにすぎない。他の社会は、地方司令官にもっと独自性を持たせるかもしれない。北ベトナムも階層的組織であったが、彼らの軍事行動では、束縛されない作戦が長期にわたって可能であった。中央権力への攻撃は、おそらく、中心部の混沌から生まれるいかなる調整の欠如をも補うのではなく、戦場司令官が主導権を握ることになりかねない(注11)

11.ベトナムでの合衆国将校は、自分たちとサイゴンの間の通信線が、少なくともサイゴンから戦場への通信線が切断されることを熱心に(口にはしないで)願っていたことが多かったに違いない。


 対立側にもメリットが考えられる。もし、中央が協約を結ぶよう説得できたとしても、最後には周辺軍に対する戦闘を継続しなければならないことがある。未来に現われるロバート・E・リー将軍のようなホープは、ゲリラ作戦で戦いに出るのではなく、全軍を包囲することだろう。ボスニアでの困難を考えてもみてほしい。ベオグラードは1994年7月に平和協定に調印したのに、ボスニアのセルビア人は調印に拒否し、戦闘を継続したのだ(注12)。軍の首をはねることは、あまり効果的でなく、それどころかますます厄介になるかもしれない。

12.ベオグラードとボスニアのセルビア人のあいだで合意しなかったとされたのは、セルビア経済に対する西洋の圧力を弱めるためになされた偽情報だったという可能性もあろう。


 核戦争を統制する戦略について述べられている文献の大半(注13)は、全世界が燃え上がる事態に先がけて作戦を止めるために相手を説得することに割かれている。このような場合に指揮統制への攻撃が意味を持つのは、もし敵軍が否定的統制ではなく積極的統制(たとえば、「私が言うまで火をつけるな」というような)のもとで行動している場合のみである。そうでなければ、戦略は逆襲を行なうことができる。


13.たとえば、以下を参照。Paul Bracken, The Command and Control of Nuclear Forces (New Haven: Yale Univ. Press, 1983); Bruce Blair, Strategic Command and Control (Washington, D.C.: Brookings Institution, 1985); Ashton Carter et al., Managing Nuclear Operations (Washington, D.C.: Brookings Institution, 1987); あるいは、それ以前の古典として、 Thomas Schelling, Nuclear Weapons and Limited War (Santa Monica, Calif.: Rand, 1959) and Herman Kahn, Escalation: Metaphors and Scenarios (N.Y.: Praeger, 1965).


 指揮統制戦は、敵の能力を完全に破壊するより、敵の能力を低下させたり損なったりするのによい。たとえば、安全な周波数帯を破壊することは、盗聴しやすい周波数帯を使用させることになるかもしれない。基盤設備を破壊するならば直ちに代替物を探すように強いることになるだろうが、微妙に損なわれただけならそうはならない。重大な瞬間(たとえば攻撃の瞬間)における相手側の反応能力を落とすための方法を見つけることによって、相手側の00DA(注14)ループ内の攻撃者が捕まってしまう。これらの能力のすべては、「万が一うまくいったら、いい仕事」の範疇にしかない。(システムのメッセージ反復効果の周期的ピン・テスト(注15)を避けながら)痕跡を残さずにシステムを損なうことが困難になればなるほど、だれかの攻撃が何かをなしたか否かを知ることは一層困難になる――チリが静まったあとでさえも。指揮統制戦の戦闘損害評価は(何が攻撃されたかと攻撃で何が変わったかという双方の点で)あまりにもむずかしいため、戦場司令官は当然ながら、結局どういう効果があったのかをはっきり見せてくれる痕跡を見ることができないのである。

14. Observe Orient Decide Act(観察順応決定法)


15.自動応答システムに質問を送信する。


 指揮統制戦は明らかに軍事作戦の重要な局面であるが、対軍作戦への完璧な補完物(または代替物)でもなければ、一部を除いては特に新しいものでもない。情報革命は、軍事作戦を中央保全に対する人質にしてしまったけれども、メインフレームから分散処理への移行が続いていることによって中央の弱点は弱まってきている。目標調整器が爆撃照準器に取って代わろうとしているのとちょうど同じように、情報戦の地位は最高点に到達することができるだろう。

 

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