JOPESユーザーズ・ガイド

1995年5月1日
統合作戦計画立案実行システム
(Joint Operation Planning and Execution System)

JOPES過程




3つの立案領域が統合立案の範囲に入っている。

作戦行動立案。
周到な立案。
危機行動立案。

 計画は、特定の計画の焦点に依存している異なった過程のもとで展開される(図3)。それは、作戦行動立案、周到な立案、危機行動立案である。これらの過程は相互に関連している。作戦行動立案原則は、周到な立案と危機行動立案の双方に寄与している。


作戦行動立案(Campaign Planning)

作戦行動立案は戦闘司令官の責任である。周到な立案や危機行動立案のように構造化された公式の過程ではないが、作戦行動立案原則は双方に当てはまる。

 作戦行動立案は、与えられた空間と時間内で成功を勝ち取ることができるように作戦と兵站の使い方を指定することによって、CINCが国家的戦略・目的を軍事行動のための統一計画に置き換えることができるようにする。それは、戦域の戦略級目標を達成するのに必要な関連作戦に関する、戦闘司令官の戦略級ヴィジョンに似ている。

作戦行動立案は、周到な立案から危機行動立案に変えることを助ける。

 もし熟考された作戦の範囲が必要とするなら、作戦行動立案は周到な立案から始まる。それは危機行動計画を通して続き、こうして双方の立案過程は統合される。周到な計画が作戦行動計画の中核として提供する段階は、その計画の仮定、司令官の意図、利用可能な物資による。作戦行動立案と、その統合作戦立案との関係は、1994年8月15日付けのJoint Pub 5-0 立案統合作戦のための「教義」に論じられている。


戦争計画は戦争のすべての様相をカバーし、単独の作戦としてすべてを織り上げる。その作戦は、個々の目的がすべて調和するような単一の究極的な目的を有さなければならない。

クラウゼヴィッツ『戦争論』


周到な立案(Deliberate Planning)

周到な立案は、JOPESの5段階方法論を使う構造化過程に関わる。

 周到な立案過程は、統合戦略級立案文書において特定された不測事態についての統合作戦計画を展開する。これらの計画文書は、国防長官の年次「不測事態立案ガイダンス」(CPG)(不測事態立案に対して、文書化された方針ガイダンスを与えるもの)と、議長の「統合戦略級能力計画」(JSCP)(現在の軍事能力に基づいて軍の職務と使命を遂行するために、CINCと機関の長官へのガイダンスを与えるもの)。周到な立案は、JOPESガイダンスに基づく5段階において完成される。

i. 開始

 第1段階「開始」は、戦略目標と立案の仮定を指定し、それぞれの任務のために計画のタイプを指定し、立案のために主要な戦闘・戦略部隊をCINCに配分する。この情報は、JSCP内のCINCに与えられる。

ii. 構想開発

 JSCPに割り当てられた任務に対応して、CINCは第2段階「構想開発」のあいだに、使命分析を指揮し、重要な友好国と敵国の中心を指定し、作戦のための司令官の全体の意志を決定し、幕僚の見積もりを開発する。第2段階の最終結果は、CINCの戦略構想であり、これは再検討と認可が必要なので議長に提出される。

iii. 計画開発

  CINCの戦略構想が認可されれば、完全な計画開発と文書化を伴う第3段階「計画開発」が始まる。この過程は、CINCの作戦構想を支援するための軍、支援、輸送立案文書を作り出す。この過程はこの入門書の後半の「TPFDD開発」を論じている部分で詳細に論じられる。

iv. 計画再検討

  第4段階「計画再検討」では、適正さ、実現可能性、受容性、統合教義への一致に関して、計画が再検討される。議長によって認可される必要のあるこれらの計画は、統合幕僚、部隊、戦闘支援機関(CIO, DIA, DISA, DLA, DMA, NSA)によって再検討される。

v. 計画開発支援

 第5段階「計画開発支援」においては、CINCの計画を増強するための計画を完成させるものとして、下位支援司令官に重点が移動する。

危機行動立案 (Crisis Action Planning / CAP)

CAPは、実在する状況に基づいて、割り当てられた軍の実際行動のために遂行される。CAPは、JOPESで規定された6段階の開発過程に従う。

 危機行動立案には、周到な立案同様、JOPES出版物で確立されたガイダンスに従う構造化された過程がある。この立案過程は、実行のための作戦行動計画と作戦命令(OPORD)の時間的制約のある開発に終わる。

 

i. 状況開発

 第1段階「状況開発」は、危機の知覚・認識に始まり、CINCの査定の開発に終わる。

ii. 危機査定

 第2段階「危機査定」は、危機が切迫しているか否かについてのCINCの査定と決定を、NCAと議長が査定するものである。

iii. 行動開発の課程

 第3段階「行動開発の課程」のあいだに、NCAまたはCINCは一つまたは複数の行動課程を開発する。CINCは司令官の見積もりと勧告を議長に提出する。

iv. 行動選択の課程

 第4段階「行動選択の課程」では、NCAは行動の課程について決定する。

v. 計画再検討

 第5段階「実行立案」においては、CINCは作戦行動計画またはOPORDと、TPFDDを開発する。

vi. 計画再検討

 第6段階「実行」は、作戦行動計画またはOPORDを実行するというNCAの決定である。

危機行動開発策定過程は、時間的制約のある統合作戦計画(作戦行動計画とOPORD)を実行するための開発に終わる。

 OPORDは、危機行動立案のあいだに規定されたJOPES形式で準備される。それは、ある作戦の調整された実行をもたらすように下位司令官に対して司令官によって発行された指令という形式である。

周到な計画(Deliberate Plan)

周到な計画は、危機対応にあたって迅速に変換するための枠組みを作るものである。周到な計画には4形式がある。OPLAN、CONPLAN、TPFDDつきCONPLAN、機能的計画である。

 議長のJSCP立案要求に基づいて、CINCは4形式の周到な計画を用意する。OPLAN、CONPLAN(TPFDDのあるものとないもの)、機能的計画である。これらの計画は危機対応にあたって迅速な変換を容易にするものである。それぞれの計画は異なったJOPES手続きと形式の要求を有する。しかし、どれもが5段落を有する基本形式に従う。

  1. 状況
  2. 使命
  3. 実行
  4. 管理と兵站
  5. 指揮統制

しかし、実のところ、司令部が巨大になるにつれて、立案に時間がかかるようになる。部隊を定位置に移動させ、偵察し、弾薬その他の供給品を備蓄し、地上・空中で参加する他の要素を調整するのも時間がかかるようになる。良心的な司令官にとって、時間は彼の計画の最重要な要因である。適切な先見性と正確な予備行動によって、彼は自分が統制する最も貴重な要素――自分の部下の生命――を温存できることを知る。

General Mathew B. Ridgway, 『朝鮮戦争』

 

作戦計画 (OPLAN)

OPLANとは、完全で精密な統合作戦計画である。

OPLANは以下の場合に用意される。

不測の事態が国家権益への強制を伴い、国家安全保障にとって致命的であるとき。
緊急事態の性質(大規模なもの)が、複雑な問題に対する詳細な優先的立案を要求する場合。
詳細な立案が戦争抑止に寄与する場合。
詳細な立案が、多国籍立案の支援に必要な場合。
詳細な立案が、特別な軍と支援要求を決定するのに必要な場合。

OPLANは、JOPES構造化計画に適用可能なすべての文書を使って、作戦構想の完全な記述を伴っている。これは計画を完遂するのに必要な特定の軍、機能的支援、物資要求を指定し、それらを戦域に移動するための最終見積もりを提供する。OPLANは迅速にOPORDに変換できる。


OPLANには以下のものがある。  
関連する追加を伴う詳細な付録 これは、関連する追加を伴うJOPESで規定された付録を最大20件含む。
時系列軍展開データ

これは常に時系列軍展開データ(TPFDD)を含む。(TPFDDはこの入門書の後半で詳細に論じられている)


 OPLANは詳細であるという性質があるため、JOPESガイダンスは司令官の作戦構想の完全な提示を必要とする。JOPESは、すべての付録と追加に、CINCの作戦構想、戦闘支援、戦闘機関支援活動についての詳細な情報を含むように要求している。


 

構想形式の作戦計画 (CONPLAN)

CONPLANは、短縮された「構想」形式における統合作戦計画である。CONPLANには2タイプある。

CONPLANは、OPLAN、作戦行動計画、OPORDに変換するためには、かなりの拡張や変更が必要である。CONPLANにおいて、基本的なOPLANの要素はすべて要約形式で含まれているが、使命・状況・仮定・作戦構想は別で、これらの要素は完全に開発されている。付録と追加の完全な補足は、CONPLANにおいては必要とされない。CONPLANは、計画遂行に顕著な影響を与えるような、兵站において要求されるものと、軍・移動・兵站支援に関する主要な制約についての要約を含んでいる。


TPFDDのないCONPLAN

CONPLAN(TPFDDなし)は、一般的に以下の場合に要求される。

偶発事件が権益にあまり影響を持たないが、国家安全保障には重要である場合。
2国間同盟または条約協定が、条約加盟国による偶発事件立案を必要とする場合。
偶発事件の規模が小さく、詳細な立案の必要性が小さく、より一般的な能力に基づいた構想によって近々扱うことができる場合。
特別な脅威が特定されていない場合

TPFDDつきCONPLAN

TPFDDつきCONPLANは、軍の段階的展開のためのより詳細な立案を必要とするCONPLANである。OPLAN同様、これは緊急事態が国家権益に影響し、国家安全保障にとって致命的である――が、近い時点では起こらないと思われる――ときに用意される。想定される大規模な緊急事態は、通常CONPLANとして導かれるものよりも詳細な立案を必要とする。TPFDDつきCONPLANを準備する場合、OPLANを開発するのと同じJOPES手続きに従う。


 

機能的計画 (Functional Plans)

機能的計画は、随意の、あるいは敵のいない環境(たとえば、戦域間兵站、通信、作戦の継続など)における特定の軍事作戦のために開発される。

 機能的計画は、戦闘司令官が災害救援、人道的援助、平和作戦などの「機能的平時作戦」に取り組むために開発されることもある。これは、JSCP任務に対する対応において、CINC主導として、または国防長官のための実行機関として活動している部隊または防衛機関(たとえば、文官当局者への軍事的支援など)による任務として開発される。

 機能的計画は、CONPLAN(TPFDDなし)として構成され、出版されているJOPES形式に従う。付録と追加は必要なものとして開発される。




by 石原光将(ISHIHARA Mitsumasa)