JOPESユーザーズ・ガイド

1995年5月1日
統合作戦計画立案実行システム
(Joint Operation Planning and Execution System)

序文


統合作戦計画立案実行システム(The Joint Operation Planning and Execution System, [JOPES])は、統合軍事作戦を計画立案・実行するために使われる統合システムである。

 JOPESは、統合方針手続き(ガイダンス)と、統合軍事作戦を計画立案・実行するのに使われる自動化データ処理(automated data processing [ADP])支援の結合である。JOPES(とその関連システム)は、作戦計画の開発と時系列化軍展開データ(time-phased force and deployment data [TPFDD])を支援するために20年以上使われてきたが、現在の自動化システムは、現実世界作戦での散開を補助するものとして「砂漠の盾」作戦で初めて現実の火の洗礼を受けた。それ以来、JOPES ADPは事実上すべての展開において使われている。その性能は理想からはほど遠いものであるが、兵力を使いこなす我々の能力の必須部分となっている。


JOPESは統合方針・手続きの結合であり、自動データ処理(ADP)に支援され、統合司令官と計画者に統合軍事作戦を計画立案・実施する能力を与えるよう設計されている。

この入門書は、JOPESの一般的概観を示す。その目的は、JOPESは単なるADPシステムにすぎないという共通の誤解を解くことである。そのために、はっきりとした簡潔な用語で、JOPESは本当は何なのかを解説する。この文書は、1994年9月11日付の『統合作戦計画ユーザーズ・ガイド』に対する補助物として使われることを意図している。その文書は、統合計画原則のさらに詳細な概観を示している。


戦争において、計算なくして達成されるものは何もない。細部において健全に計画されないものはすべて、何の結果も生み出さない。

ナポレオンの格言

JOPESは、統合軍事計画立案実行のための規格化された枠組みを与える。JOPESの範囲は、一般に理解されているよりずっと広い。

図1は、JOPESのさまざまなパーツを描いている。JOPESは、NCA方針決定を統合戦闘司令官の空・陸・海作戦に返還するための、国防総省内部の主要なシステムである。これは、国防総省戦争計画立案・実行方針を事前に決定し、特別手続・フォーマットを計画立案し、NCA決定を統合作戦計画に変換するADP支援を提供することによってなされる。統合作戦計画は、統合作戦のための青写真である。


 
NCA 国家指揮最高部    
NSC 国家安全保障会議 CIA 中央情報部
STATEDEPT

国務省

DOD 国防総省
CJCS 統合参謀本部議長 JPEC 統合計画立案実行コミュニティ
ARFOR
AFFOR
NAVFOR
SOF
MARFOR
陸軍部隊
空軍部隊
海軍部隊
特殊戦部隊
海兵隊部隊
USA
USAF
USN
USMC
USCG
合衆国陸軍
合衆国空軍
合衆国海軍
合衆国海兵隊
合衆国沿岸警備隊
JTF 統合機動部隊 USTRANSCOM
MTMC
AMC
MSC
合衆国輸送司令部
軍事運輸管理司令部
空輸機動性司令部
主要海上輸送司令部
 

 統合作戦プロセスのプレイヤーは、図2に記されているように、国家指揮最高部(NCA)と統合作戦実行コミュニティ(Joint Planning and Execution Community [JPEC])を含む。


国家指揮最高部(National Command Authorities [NCA])は国家的方針と戦略の方向を設定する。

 大統領と国防長官は、NCAとして、ピラミッドの頂点に位置する。彼らは、国家方針と合衆国軍全体の戦略的方向を最終的に決定する。彼らは大統領府内の実行部門・組織、特に国家安全保障会議(National Security Council [NSC])によって支援される。


国家安全保障会議(The National Security Council)[NSC]システムは、方針決定の実行においてNCAを支援する。

 NSCは、国家安全保障問題を熟考する主要なフォーラムである。NSCは、国家安全保障戦略と実施のための方針決定を、大統領が最高司令官として確立するための枠組みを提供する。大統領は、国家安全保障戦略を実施する軍隊に対して直接命令を発するか、司令を使って軍事行動を委任するかする。これらの司令は、以下の形態をとることができる。国家安全保障戦略文書、国家安全保障司令、大統領令、行政命令。


統合計画立案実行コミュニティ(Joint Plannning and Execution Community [JPEC])は、統合作戦計画・出版物・文書を計画立案・実施する。

 ピラミッドの下層に描かれているように、JPECは、作戦戦場に割り当てられた軍隊の訓練・準備・移動・応接・雇用・支援・維持にかかわる司令本部、司令官、機関から成る。JPECの長は議長と参謀本部であり、任務割り当て文書を発行し、製品を見直し、平時の計画の最終版を承認する。支援された指揮官とその部下たちは、作戦計画と命令を開発実行する責任がある。部隊とその兵站機関は、戦闘司令官のために組織化、装備、訓練、兵力維持をすることによって、鍵となる支援任務を果たす。


JOPESは、以下のものを含むシステムである。

JOPESは、NCA決定を、戦闘司令官の統合作戦に変換するシステムである。それは以下のものを含む。

出版物と文書

一連の出版物と文書。これは、OPLANとOPRDの開発を誘導する

作戦計画プロセス

作戦計画プロセス。これは周到な計画(OPLAN)と作戦命令(OPORD)を開発する。

ADP支援システム

ADP支援システム。これはOPLANとOPORDの開発に必要なデータ処理支援を行なう。




by 石原光将(ISHIHARA Mitsumasa)