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41 奇戦 戦いで、奇襲とは、その備えのないところを攻め、不意に出るものである。交戦のとき、正面を驚かせておいて後方を襲い、東を衝いて西を撃ち、敵が備えられなくするといい。このようであれば勝つ。 兵法にいう、「敵の弱点があれば、自軍は必ず奇襲する」(李衛公問対・中)
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42 正戦 敵と戦うのに、もし道路が通じず、補給は進めず、計略で誘うこともできず、利害を惑わすこともできなければ、正兵を用いるべきだ。正兵とは、士卒を選抜し、よい兵器を使い、賞罰をはっきりさせ、命令を信頼させるものであり、これで戦い、前進すれば勝つ。 兵法にいう、「正兵でなければ、どうして遠くで戦えようか」(李衛公問対・上) |
43 虚戦 敵と戦うのに、もし自軍の勢いが弱ければ、強大な形を偽って示し、敵にその虚実を知らせないようにし、軽々しく自軍と戦わせないようにすれば、自軍を全うし、軍を保つことができる。 兵法にいう、「敵があえて自軍と戦わないのは、その行くところをはぐらかすからだ」(孫子・虚実編) |
44 実戦 敵と戦うのに、敵の勢いが充実していれば、自軍は兵を厳戒にして備えれば、敵軍は軽々しく動かない。 兵法にいう、「充実した敵には、備える」[孫子・始計編]
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45 軽戦 敵と戦うには、敵の詳細を調べてから兵を出すべきだ。もし計画なく進み、謀らずに戦えば、必ず敵に敗れることだろう。 兵法にいう、「勇者は必ず軽々しく戦う。軽々しく戦って、勝利を知らない」[呉子・論将] |
46 重戦 敵と戦うのに、慎重にするようにし、有利さを見れば動き、有利でなければ止まり、慎んで軽挙してはならない。このようであれば、必ず死地には陥らない。 兵法にいう、「動かざること山のごとし」[孫子・軍争編] |
47 利戦 敵と戦うのに、その将が愚かで応変ということを知らなければ、利益をちらつかせて誘うといい。敵が利を貪って害を知らないなら、伏兵を設けて撃つといい。その軍は敗れるだろう。 兵法にいう、「利益によって誘う」[孫子・始計編]
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48 害戦 敵との国境を守るのに、もし敵がわが国境を侵犯して辺境の民を攻めたなら、要害の地に伏兵を置いたり、障害となる砦を築いて迎撃すべきである。敵は軽々しく来なくなるだろう。 兵法にいう、「敵に来させないのは、妨害するからである」[孫子・虚実編] |
49 安戦 敵が遠くから来て士気が高いなら、速戦すると敵に利益がある。自軍は溝を深く、防塁を高くし、ひたすら守って応ずることがなく、敵の疲労を待つ。もし敵が挑発して戦おうとしても、動いてはならない。 兵法にいう、「動かないなら平静であれ」[孫子・兵勢編] |
50 危戦 敵と戦うのに、もし危急存亡の状況に陥ったなら、将士を激励して死を決して戦い、生きることをおもわなければ、勝つ。 兵法にいう、「兵士があまりに危険に陥れば、恐れなくなる」[孫子・九地編]
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51 死戦 敵が強勢で、自軍の士卒が疑い惑い、命令を受けることもしないならば、彼らを死地に置かねばならない。三軍に口で命令しても得るものはない。牛を殺し、車を焼き、戦士にごちそうをふるまい、糧食を焼き捨て、井戸・かまどをふさいで壊し、舟を燃やして釜を破り、背後を断って、生き残ろうという考えをなくさせれば、必ず勝つ。 兵法にいう、「必死であれば生きる」[呉子・治兵] |
52 生戦 敵と戦うのに、もし地の利をすでに得、士卒はすでに陣をつくり、法令はすでに行なわれ、奇兵をすでに設けてあれば、まさに命を捨てて戦うことで勝つ。もし将が陣に臨んでおそれたりおびえたりして生を求めようとすれば、かえって殺されることになる。 兵法にいう、「生を幸いとすれば死ぬ」[呉子・治兵]
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53 飢戦 兵をおこして征討し、深く敵地に入り、食料が欠乏すれば、必ず兵を分けて略奪に振り向け、敵の倉庫をねらい、その蓄積を奪い、軍の食糧を確保すれば勝つ。 兵法にいう、「食糧を敵に頼る。こうすれば軍食は足りるだろう」[孫子・作戦編]
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54 飽戦 敵が遠くから来て糧食が続かず、敵が飢えて自軍は飽食していたら、壁を堅くして戦わず、持久戦にして相手を苦しめ、その糧道を断つとよい。敵が退却したら、ひそかに奇兵を送り、その帰路を遮り、兵を放って追撃すれば、破ることは確実である。 兵法にいう、「補給充分で飢えを待つ」[孫子・軍争編] |
55 労戦 敵と戦うのに、もし便利な地に敵が先に陣をしいており、自軍が後れて戦いに向かったならば、自軍は疲労して敵が勝ってしまう。 兵法にいう、「後れて戦地に到着し、戦いに赴く者は疲労する」[孫子・虚実編] |
56 佚戦 敵と戦うのに、自軍が勝ちをほこって気を抜いてはならない。まさにますます厳重な警戒を加えて敵を待ち、安佚であってもやはり気を配るべきである。 兵法にいう、「備えあれば憂いなし」[春秋左氏伝・襄公十一年] |
57 勝戦 敵と戦うのに、もし自軍が勝って敵軍が敗れても、おごり高ぶってはならない。まさに日夜厳しく備えて待機すべきだ。そうであれば敵が来たとしても、備えがあれば害はない。 兵法にいう、「すでに勝ってもそうでないときと同じようにする」(司馬法・厳位)
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58 敗戦 敵と戦って、もし敵が勝って自軍が負けたとしても、おそれおびえる必要はない。害のなかにも利益があることを思い、兵器を整備し、士卒を激揚し、敵が倦怠したのをうかがって撃てば、勝つ。 兵法にいう、「害によって憂いを取り除くとよい」(孫子・九変編)
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59 進戦 敵と戦うのに、もし敵に勝つはずだという理由があることが詳しくわかったときには、すぐに速やかに兵を進めて突けば勝たないことがない。 兵法にいう、「可を見たならば進む」(呉子・料敵)
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60 退戦 敵と戦うのに、敵が多くて自軍が少なく、地形が不利で、力で争うことができなければ、急いで退却して避け、軍を全うすべきだ。 兵法にいう、「難を知って退く」[呉子・料敵] |
by ISHIHARA Mitsumasa 石原光将 |