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1998年11月15日 Sunday Times

イスラエルが
サダムを屈服させる
「民族」爆弾を計画

by Uzi Mahnaimi
and Marie Colvin

sadam

イスラエル軍と西側諜報機関によると、イスラエルは、アラブ人には害だがユダヤ人には効かない生物兵器を開発中である。特定人種の血統に関するこの兵器は、イラクの生物化学兵器攻撃の脅威に対するイスラエルの返答と見られる。

 昨日、イラク大統領サダム・フセインは戦争の瀬戸際を回避し、生物化学兵器工場疑惑のある施設を査察団が査察することへの協力を再開することに合意した。

 国連事務総長コフィ・アナンは、イラクが国連の要求を満たしていると信じる、と述べた。しかし、英国と米国はサダム爆撃を主張していたため、トニー・ブレアの官房は、服従は無条件でなければならないと述べた。

 湾岸戦争以来最大の攻撃をするとしてイラクを脅迫しているホワイトハウスによると、大統領ビル・クリントンの顧問がイラクの申し出は適正であるかどうかを査定しているという。国防総省は数日以内に爆撃する準備ができている。

 先週、サダムがスカッド・ミサイルに装填された攻撃的生物兵器の製造を完成させるには数週間以内でできる、とダウニング街が労働党首に警告した。イスラエルは湾岸戦争の時にスカッドで攻撃されており、その主要な標的になるのではないかとおそれている。

 「民族爆弾」開発にあたって、イスラエルの科学者は、数人のアラブ人から得られた特定の遺伝子を識別し、それから遺伝子学的に修正されたバクテリアやウィルスを製造するという医学の進歩を利用しようとしている。

 その目的は、ウィルスやある種のバクテリアの能力を使って、その宿主の活性細胞の中のDNAを変更するということである。科学者たちは、特定の遺伝子を持つ人だけを攻撃するような致死的微生物を工作しようとしているのだ。

 このプログラムは、イスラエルの生物化学兵器の秘密製造のための主要研究機関である Nes Tziyona(ネス・ツィヨナ)の生物学研究所が中心となっている。

 その地のある科学者は、アラブ人とユダヤ人は共通のセム族という起源を持っているので、この任務は極めて困難であると述べた。しかし、彼は言う。「しかし、特定のアラブ社会、特にイラク人の遺伝子的プロフィールの特別な特徴を精確に特定することに成功した」。病気は、微生物を空気中に噴霧したり、給水に入れることで広めることができるという。

 この研究は、アパルトヘイト時代に南アフリカの科学者によって行われ、真実と和解委員会の前で証拠によって明らかにされた生物学研究を反映している。

 このような研究を実施しているユダヤ国家の考え方は、すでに数十年にわたって暴虐を引き起こしてきた。それは、アウシュヴィッツのナチ科学者ドクトル・ヨーゼフ・メンゲレの遺伝実験と同列だからである。

 イスラエル国会クネセトの議員、Dedi Zuckerは、昨日、研究を弾劾した。
「道徳的に、我が歴史と、伝統、経験に基づけば、そのような兵器はけしからんものであり、否定されなければならない」。

 数人の専門家は、人種的標的兵器の概念は実現可能であっても、製造に関する実用的な側面は膨大なものになると述べている。

 南アフリカの生物化学戦工場長の Dr. Daan Goosen は、1980年代に自分たちのチームが黒人だけを標的にする「有色兵器」を開発するように命ぜられたとのべっている。そのチームは、ビール、トウモロコシだけでなくワクチン接種にまでも病気を広めることを論じたが、開発には至らなかったという。

 しかし、国防総省機密レポートは、昨年、新しい致死兵器を生産するために、生物兵器を遺伝的に設計できると警告した。アメリカ国防長官ウィリアム・コーエンは、「民族を選ぶある種の病原体」を作成しつつある国々のレポートを受け取ったと述べている。上級西側諜報情報源によると、イスラエルがコーエンの述べた国の一つであるということを先週確認したという。

「人種爆弾」という主張は、安全保障・防衛に関して詳しく監視しているジェーンの出版物「海外レポート」において記載されてきた。これは、匿名の南アフリカ人情報提供者の言葉として、イスラエルの科学者がアラブに対する「民族弾」を開発しようとして、南アフリカの研究をいくつか使用してきたとしている。

「アラブ出身、特にイラク出身のユダヤ人」についての研究によって、イスラエルはアラブ人の遺伝子構成の特徴を発見したともいう。

 イギリス医学会は、1月に発表される予定の調査において、遺伝子学に基づく生物兵器の致死性の潜在能力について、
ひじょうに懸念するようになっている。

 その研究を組織した Dr. Vivienne Nathanson はこう語る。「人種を標的にする兵器を使って、群衆内のグループを攻撃することもできるかもしれない。多くの紛争が民族問題に起因してきたという戦争の歴史は、これがいかに恐ろしいかを示している」。

 イギリスの生物学的防衛の創始者、Porton Down は、先週、このような兵器は理論上可能であると述べている。「私たちは、生物兵器を統制するための国際会議が必要だというのは明らかだという見地に達した」とスポークスマンは述べた。

追加取材:Matthew Campbell in Washington, Hugh McManners

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1999年2月1日:産経新聞

特定民族のみ有効な遺伝子兵器

英医師会(BMA)は、このほど遺伝子工学の発達により、特定の民族を選んで死に至らしめるという遺伝子兵器が、五年から十年のうちに出現する可能性がある、と警告を発した。
医師会の保健行政研究部門の責任者であるビビアン・ネイサンソン博士は「遺伝子兵器は現在存在しているわけではないが、実現の可能性は高まっており、われわれは早急に対策を立てなければならない」と訴えている。

医師会が発行した報告書「生物兵器と人類」は、遺伝子兵器誕生の主たる根拠として、米政府が進めている「ヒトゲノム計画」の進展をあげている。

ヒトゲノム計画は、人間の遺伝子情報の総体ヒトゲノムのすべてを解析しようという計画で、一九八八年から米国を中心に進められてきており、二〇〇三年までに、約十万種と見積もられている人間の全遺伝子の解読をめざしている。実現すれば、がんや老化、遺伝子病の研究や診療に計り知れない恩恵を与えるといわれているが、その一方で、個人や民族の遺伝子の特徴が明らかになることによって、軍事目的に使われるおそれが出てきた。

たとえば、ある民族の遺伝子だけに反応して、発病するウイルスを、その民族の居住地近くにまき散らすといった、悪夢のようなテロも起こりうるという。

すでにイラクでは、アラブ地域に特有の細菌を使って、免疫のない 欧米人をねらい撃ちにする生物兵器の開発が進んでいた、との国連査察官の証言がある。また、南アフリカでは、黒人に対する細菌兵器の研究が知られている。

生物兵器の廃絶をめざした生物・化学兵器禁止条約は、現在百四十カ国が調印しているが、査察の権限や制裁が盛り込まれておらず、効力には限界がある。英医師会では、遺伝子兵器の開発を阻止するために、まず条約の強化を求めている。


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