1999年7月18日。ロシア南部国境のある場所で、戦闘が激化しつつある。戦闘の合間に、ロシアの拡声器が、敵部隊に影響を与えるか又は『催眠術』をかけることを目的とした刺激的なメッセージ(音声合成装置を通して作り出された)を放送する。恐怖感又は不安感を引き起こすことを目的としたホログラムが、文化及び宗教的内容で装飾されたメッセージと画像を映し出す。噂によれば、色彩と数字の特殊な組合せを描くある特殊ホログラムは、いくつかの肉体的機能の停止を引き起こすという。チタン製ロボットが、降伏の仕方に関する敵への説明の付いたビラを散布しつつ、戦場を徘徊している。多連装ロケット発射機及び砲兵ロケット攻撃は、大量砲撃の衝撃効果に基づくもう1つのタイプの心理戦を引き起こす。
一方、モスクワの国防省の本部においては、ロシアの情報心理活動の専門家達が、作戦を調整し、戦争努力に対するその影響を計画する。当紛争の数年前、コンピュータ・ステルス・ウィルスが、敵の指揮・統制部隊に位置する軍事売却システムに埋め込まれていた。現計画の一部として、ロシアの専門家達は、これらのウィルスを活性化する。彼らは、敵の意志決定者に対して『反映統制』と情報戦作戦を行う。そして彼らは、敵の認識を操作するために侵略国のテレビ・ネットワークに対して催眠映像を送信する。
これらの専門家達はまた、敵軍に課せられる精神病の程度と起こり得る数多くの鬱病を確認するために医師の助言を受ける。この情報を収集した後、専門家達は、追加の情報・心理打撃を計画する。戦闘が巨大なコンピュータ化されたTV画面上から除去され、拡声器は再度鎮静効果のあるメッセージを放送し始める。
この未来戦のシナリオは、21世紀の情報作戦に関する数多くのロシアの理論を組合せ、この作戦が心理作戦(PSYOP)といかに結びつき得るかを示唆する。少なくともこれらのロシアの理論は、短期的には希望的観測に過ぎない。というのも、ロシア軍がチェチェンの反乱と均衡を維持するために争った最近のチェチェン紛争は、ロシア軍が、情報・心理活動に焦点を合わせる以前に議論しなければならない重大な問題を有していることを示しているからである。
しかしながら、他の国のようにロシアは、その軍に対する情報化時代の影響を真剣に研究している。ロシア軍の計画立案者は、情報化時代においては、誰もが有る程度脆弱であることを理解している。情報技術における発展は、いくつかの技術を欠く国に、より技術的に進歩した情報ネットワークを有する国に急速に追いつくことを可能にするだろう。
ロシアの軍事理論家は常に、政治宣伝又は情報操作を通して、ロシア兵の精神を支配する敵の能力に特に敏感である。彼らは、兵士の『精神・心理的』準備をロシアの戦争原則であると考えている。
過去において、政治委員が兵士のイデオロギー、精神及び心理的安定性を担当した。しかし、ロシア社会は現在移行期にあり、ロシアの社会学者は、大衆と軍が国外からの、そして国外で行われる情報作戦に心理的に不安定であり、極めて脆弱であると考えている。敵の情報・心理・論理能力に対抗する要求は、より重要にすらなっている。あるロシアの著者は、以下のように指摘した。
情報拡張論に対抗し、ロシアの国家利益を保護することは、ある程度同義である・・・。恐らく現在、『静かな』侵略が全面軍事作戦の開始以前の数週間又は数年前にですら起こり得るだろう。現実にはいかなる戦争も武装紛争も存在しないが、実際には侵略が既に起こっている・・・。それ故、情報・心理侵略に対抗すべき措置が事前に実用的に開発及び習得されていない場合、国に対する結果は、極めて深刻なものとなりえる。
ロシアがその戦争原則の1つが情報作戦の発展分野に脆弱であることを認めるとき、全世界は、米国の全てにとって学ぶべき教訓が存在することに注意すべきである。
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